耐震補強工事は大きく分けて4つの方法があります。一つずつご紹介します。
【1】壁を強くする・増やす
強い壁を増やすことが耐震補強の第一歩。現在の壁を耐震性の高い壁にすることで、「壁の量(強さ)」を増やし、「壁の配置バランス」を改善できます。構造用合板や筋かいによる補強もありますが、耐震補強部材メーカーが開発した耐震性のより高い工法もあります。木耐協では「かべつよしシリーズ」による補強を推奨しています。通常の壁補強では必要な天井・床の解体が不要なため、低コストで耐震性を向上させることが可能です。
また、壁の補強を行う際には、柱が引き抜けないように金物でしっかり固定することが重要です(柱頭・柱脚接合部)。1995年に発生した阪神・淡路大震災では、このつなぎ目を金物で固定することが義務づけられていた3階建ては倒壊被害が少なく、義務化されていなかった2階建て以下の木造住宅に甚大な被害が発生しました。その後、2000年に建築基準法が改正され、2階建て以下も金物による固定が義務化されました。
内壁耐震補強
内壁耐震補強
外付けホールダウン金物
【2】基礎を強くする
壁を強くしても足元の基礎が丈夫でないと耐震性を発揮できません。
基礎の補修や補強には、主に3つの施工があります。
1.「補修」ひび割れを補修する
基礎の補修
ひび割れが生じている基礎にエポキシ樹脂などを注入し穴を塞ぎます。これは、基礎を強くするというよりも、ひび割れがよりひどくならないようにするための工事。また、鉄筋が入っている基礎の場合、雨水によって基礎がさび付き、基礎が割れてしまう「基礎の爆裂」を防ぐ事が目的です。
2.鉄筋コンクリート造の基礎を足す
鉄筋が入っていない無筋の基礎に、鉄筋コンクリート造の基礎を足しています。基礎の「増し打ち」と呼ばれ、鉄筋コンクリート造の基礎を抱き合わせて一体化させる工法です。
壁が強くても、足元(基礎)の踏ん張りが効かないと壁本来の強さがでません。無筋基礎の上にある壁は耐震性が低く評価されるため、壁の補強とセットで行うことで補強箇所数を抑えることができます。
3.「基礎の新設」基礎を新たに設置する
既存の基礎がある壁を補強しても、目標とする耐震性とならない場合など、壁補強を考える上で、そうしても新しく壁を作る必要が出た場合などは、基礎を新しく設置します。基礎の新設は大がかりな工法となるため、高額な補強方法となります。
【3】木材が腐ったり、シロアリで傷んだ箇所(劣化)を直す
木材は腐ってしまうと本来の強さを発揮することができなくなり、耐震性が大きく低下します(最大3割減)。特にお風呂や洗面所など水廻りが多い北側は要注意です。
土台が腐朽またはシロアリ等の被害を受けている場合、傷んだ木材を取り外し交換します。その際、防腐・防蟻処理を推奨しています。また、腐朽・防蟻対策として、床下に調湿炭を敷き詰めることも効果があります。
【4】屋根を軽くする
耐震診断では、屋根や壁の重さ(建物重量)が重たいほど、それを支える為に必要な壁の強さ(量)が大きくなります。軽い材料の屋根に葺き替える(軽量化)ことでで、揺れにくくなり耐震性が向上します。
重量のある日本瓦や土葺き瓦の住宅は頭が重たいため、地震の時に揺れやすくなります。しかし、屋根(建物)の重さに見合った壁の強さ(耐震性)があれば問題はありません。瓦屋根が耐震性を損なっているのではなく、重さに見合った壁の強さがないことで耐震性が十分でないケースがあります。
【+αの制震】制震ダンパーで揺れを吸収!
2016年4月に発生した熊本地震では震度7の揺れが2回も発生し、1回目の揺れでダメージを受けた建物が再び大きく揺らされることで倒壊被害が拡大しました。
そこで注目されているのが「制震ダンパー」。「ダンパー」と呼ばれる特殊な装置で揺れを吸収することで、建物に伝わる地震の揺れを軽減します。
耐震に制震をプラスアルファすることで、より安全・安心な住まいになります。