木耐協調査データ 2025年10月29日発表

耐震診断基本データ

この耐震診断基本データは前回発表時から追加された診断結果を加算して毎回発表しています。
今回は2006年4月1日~2025年9月30日(19年5ヶ月)の間に耐震診断を行った29,974棟が対象です。

【対象の住宅・評価方法について】
・対象の住宅は「1950(昭和25)年~2000(平成12)年5月まで」に着工された「木造在来工法 2階建て以下」
・(一社)日本建築防災協会の一般診断法に基づいて行った耐震診断
・診断結果(評点)により以下の4段階【①倒壊しない②一応倒壊しない③倒壊する可能性がある④倒壊する可能性が高い】で集計し、①及び②が現行の耐震性を満たしている住宅

【1】耐震診断結果(基本データ)

「9割超」の住宅が現行の耐震基準を満たさず

診断基本データ全体

【2】旧耐震基準住宅(1950~1980年)の耐震診断結果

「97.4%」が現行の耐震基準を満たさず

旧耐震基準住宅の診断結果

【3】81-00木造住宅(1981~2000年5月築)の耐震診断結果(新耐震基準住宅)

「86.6%」が現行の耐震基準を満たさず

81-00木造住宅の診断結果

【建築基準法と耐震診断の考え方の違い】
建築基準法では、耐震計算する際に想定する地震を大地震と中地震の2段階に分けています。大地震とは建物が建っている間に遭遇するかどうかという極めてまれな地震(数百年に一度起こる震度6強クラスの地震)のこと、中地震とは建物が建っている間に何度か遭遇する可能性のある地震(震度5強程度)のことです。「大地震時には人命を守ること」「中地震の場合には建物という財産を守ること」を目標とするのが、建築基準法の考え方です。
これに対し、耐震診断では人命を守ることに重点を置き、「大地震時に倒壊しない」ための耐震性確保を目標に据えることを明示しました。大地震・中地震という2段階を設定する建築基準法と異なり、耐震診断では大地震への対応という1段階で考えることになります。

【耐震診断基準の変わり目】について
耐震基準は「1981年6月」と「2000年6月」の2度にわたって大きく改訂されています。本調査データでは「1980年以前に建てられた建物」を「旧耐震基準住宅」、「1981年以降に建てられた建物」を『81-00住宅』(新耐震基準住宅)と区分しています。本来であれば「1981年6月」をもって区分すべきではありますが、診断依頼者から詳細な建築時期を確認することが困難なケースもあることから、事務局では上記のように区分しております。

【81-00木造住宅】とは
本調査データでは、昭和56(1981)年~平成12(2000)年に建築された在来軸組構法の住宅を『81-00木造住宅』と呼びます。平成28年4月に発生した熊本地震では、昭和56年以前に建築された「旧耐震基準」の住宅だけではなく「新耐震基準」のうち接合部等の規定が明確化される以前の『81-00木造住宅』にも倒壊等の被害が見られました。このため、国土交通省の依頼を受けた(一財)日本建築防災協会が平成29年5月16日に「新耐震基準の木造住宅の耐震性能検証法」を公表しました。木耐協では、2019年12月より「81-00木造住宅」の耐震化を進める「81-00(ハチイチゼロゼロ)プロジェクト」に取り組んでいます。

対象としている【木造在来工法 平屋または2階建て】について
木耐協の耐震診断・補強の対象は、「木造在来工法」で建てられた平屋または2階建ての住宅です。

阪神・淡路大震災では、在来工法の3階建て住宅の被害は比較的少ないことが報告されています。
これは、3階建てが構造計算を伴う設計であり、柱頭・柱脚に適切な金物が設置されていたため、ホゾ抜け現象(柱の抜け落ち)が防がれたことが主な要因と考えられています。

一方で、平屋や2階建ての在来工法住宅では、当時の基準・施工精度の差により、構造的な弱点が被害の大きさにつながりました。
木耐協では、こうした住宅の耐震化を重点的に進めており、診断対象も在来工法の平屋および2階建てに限定しています。

なお、2×4(ツーバイフォー)工法やプレハブ工法、大手ハウスメーカー独自の工法は診断対象外です。

自然災害への備えの第一歩は「住宅の耐震性確保」
~在宅避難を可能にする住まいづくり~

木耐協は、木造住宅の耐震性を高めることこそが、防災の出発点だと考えています。どれほど備蓄品や非常用品を整えても、住まいが倒壊してしまっては命も生活も守れません。

大地震のあとも自宅で安全に過ごせる――それが「在宅避難」の考え方です。
十分な耐震性を備えた住宅は、家族の安心を守るだけでなく、避難所への集中を防ぎ、地域全体の混乱を抑える役割も果たします。

特に、高齢者や乳幼児、障がいのある方、ペットと暮らす家庭など、避難が難しい「要配慮者」にとって、住まいの耐震性は命綱です。
地震で家が倒れなければ、慣れた環境で安全に過ごすことができ、介助や医療、ペットの世話など、家庭ごとの事情に応じた生活を維持できます。

これからの防災は、“逃げる”から“とどまる”へ。
住宅の耐震性を確保し、ライフラインが一時的に途絶しても一定期間は自宅で生活を続けられる――そんな「在宅避難型の備え」が、これからのスタンダードです。

「旧耐震基準住宅」には減災設計を含めた提案を、
「81-00住宅」にはリフォームの機会に耐震提案を、
要配慮者を含むすべての人が安全に暮らせる地域のために、
一人ひとりの耐震化を、今こそ進めましょう。

関連団体サイト

国土交通省 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会 悪質な訪問販売 撲滅!かながわ宣言
安心リフォームの証