千葉豪雨の被害55.7%がハザードマップ外!水害後のカビ対策と工務店の役割【情報通信vol.838】

【配信日2026年8月18日】

【注目】令和8年8月千葉豪雨 被害報告の55.7%は浸水想定区域・低位地帯の「外」だった(ウェザーニューズ)

【注目】浸水した家で最初に問題になるのは、泥ではなくカビ。清掃と乾燥は48時間。そして、床は開けない

8月13日から14日にかけて、千葉県で記録的な大雨となりました。
被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

この豪雨について、気になる分析が出ています。
被害の半分以上が、ハザードマップで色の付いていない場所で起きていました。

本日は、この分析と、浸水後に工務店ができることについてお届けします。

【1】色の付いていない場所で、半分以上が浸かった

ウェザーニューズ 千葉県記録大雨の浸水被害報告2万件を分析
https://jp.weathernews.com/news/57121

アプリを通じてウェザーニューズに寄せられた9,938件の冠水報告を、浸水想定区域・低位地帯・積算降水量と重ね合わせた分析結果を公表しています。

  • ・低位地帯または浸水想定区域の「内」 44.3%
  • ・低位地帯または浸水想定区域の「外」 55.7%

半分以上が、想定区域の外からの報告でした。

【ポイント】ハザードマップは、当たっていました

ハザードマップでこれまで水害リスクが高いとされてきた地域でも、実際に多くの被害が発生しています。
市川市では、江戸川・大柏川水系の氾濫想定区域に含まれる原木インター付近で「道路が冠水し、車が半水没してエンジンが停止」。
松戸市では新坂川の増水と合わせ、「新松戸付近のアンダーパスは冠水通行止」「1階は床上浸水」。
埋立地特有の低地である千葉市美浜区、市原市でも、想定区域内からの投稿の割合が高くなっていました。

地図上のリスクと、実際の被害はよく一致していた。
つまりハザードマップは、正しく危険を示していたということです。
問題は、それだけでは今回の被害の全体像を説明できないことです。

【ポイント】下水道があふれる内水氾濫は「雨水出水浸水想定区域」で確認

想定区域の外で何が起きていたか。
千葉市中央区・緑区、柏市、八千代市などでは、「ペリエ1階浸水」「千葉駅ロータリーもすごい」「JR常磐線のアンダーパスが冠水し通行止め、車が水没」など河川の氾濫ではなく、道路やアンダーパスの排水能力を超えた、内水型の被害が中心でした。

一般的な下水道が処理できる雨量は、1時間あたり50mm程度です。
今回はその約2倍、1時間100mmを超える雨が降りました。
そして、ハザードマップの「洪水浸水想定区域図」は、河川が氾濫した場合を前提としたシミュレーションです。
下水道があふれる内水氾濫は、この図の対象ではありません。

内水には「雨水出水浸水想定区域」という別の区分があり、国土交通省の重ねるハザードマップで確認できます。
ただし自治体によって未作成・未掲載の場合があり、色が付いていないから安全、とは言えません。
そこで、同じサイトの「土地の特徴・成り立ち」を重ねます。
旧河道や低地など、その土地の成り立ちが色分けで表示されます。
河川からの距離ではなく、土地そのものの高低で見る方法です。

重ねるハザードマップを見る

現地でも確認できます。
前面道路より敷地が低くないか。半地下や掘り込み車庫がないか。
近くにアンダーパスや窪地がないか。過去に浸水した記録がないか。

市原市では、2019年の台風で浸水した区域と同じ場所で再び被害が出たとみられる報告が寄せられています。
水は、同じところに集まります。

※分析は速報段階のものです。今後の調査で評価が変わる可能性があります

【2】カビとの勝負は、48時間

水害後の住宅 カビ対策で48時間以内の清掃と乾燥が重要
(Yahoo!ニュース エキスパート/あんどうりす氏 8月14日)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/4b1b2b399fa7420ea68ff5ff1720d3fccfbf1498

浸水した住宅で最初に問題になるのは、泥ではなくカビです。
浸水から48時間を過ぎると、カビが急速に増殖します。
だから濡れた荷物の搬出、清掃、乾燥を優先する。
ここが復旧の起点になります。

千葉ではすでにこの時間を過ぎていますが、乾燥に取りかかるのは早いほどよい。
そして次の水害では、この48時間が判断の基準になります。

【ポイント】床は、開けない

荏原製作所が公開している「住宅における水害対応マニュアル(詳細版)」に、現場で判断が分かれる点が明記されています。
監修は、信州大学工学部建築学科の中谷先生です。

特段の理由がなければ、床は解体しない。
ダクトファンで送風し、基礎や木材の乾燥を優先する。

床を不用意に開けると、床下の汚染された空気が室内に入り込むおそれがあるためです。

清掃方法も具体的です。
泥で汚れた床を雑巾で拭くと、泥を伸ばしてしまう。
水分を外に出し、中性洗剤とブラシや大きめのスポンジで吸い取る——と記されています。

水害対応マニュアル(詳細版)を読む

【ポイント】水が引いた後に進める、五つのこと

中谷先生は、被災された方向けの手順もまとめて公開されています。
まず、安全の確認から。
水害後の住宅には、漏電やガス漏れのリスクがあります。
そのうえで建物や家財を撮影しておく。
罹災証明や保険手続きに必須ではありませんが、被害の把握に役立ちます。

そして、次の五つに、できる範囲で同時に取りかかる。

  • 1. 生活環境を整える
  • 2. 建築会社・工務店などに連絡する
  • 3. 行政に連絡する(罹災証明書の申請)
  • 4. 建物・家財の保険会社に連絡する
  • 5. 車の保険会社に連絡する

二つ目が、皆様です。
「工事内容が決まっていなくても、できるだけ早く連絡してください」と書かれています。
浸水すると、目に見える床や壁だけでなく、床下、壁の内部、断熱材、電気設備、給湯器にも被害が生じるためです。

【3】「工務店の仕事として」 全国大会2026より

https://www.mokutaikyo.com/zenkoku2026

中谷先生には今年1月、木耐協全国大会2026でご講演いただきました。
演題は「木造住宅の水害からの再建支援 ~工務店の仕事として~」。
ご自身も水害の被災者であり、全国の被災地で復旧支援を続けてこられました。

被災者の不安や疑問に真正面から向き合いながら、水害復旧における工務店の役割を具体的に解説されました。
特に「床があるか」「自宅で風呂に入れるか」が被災後の精神状態を大きく左右する点を挙げられ、生活再建を最優先に考える姿勢の重要性を強調されました。
床下は泥出しより乾燥を重視するなど、現場で即実践できる知見も共有されています。

そして、水害対応はボランティアや善意に頼るものではなく、工務店経営として備えるべき重要な事業分野である——。
この考えが示され、会場の空気が変わりました。


浸水した家のその後を分けるのは、水位ではありません。
その日のうちに電話をかけられる相手がいるかどうかです。

耐震補強も、かつては同じ位置にありました。
災害のたびに善意で動くのではなく、仕事として受けられる体制をつくっておく。
その差が、地域で選ばれるかどうかを分けていきます。

そして地図の話に戻れば、ハザードマップの外にも、備えるべき家があるということです。
点検や訪問の際に、土地の高低を一度見ておく。
それだけでも、次の一本の電話が変わってきます。

チラシやDMなど、その場でお渡しできるものを組合員専用ホームページでご用意していますので、ぜひご活用ください。

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