災厄をもたらした既存不適格のブロック塀【情報通信 vol.444】

コラム

━木耐協情報通信 vol.444━━━━━━━━━━2018年6月26日━━━

 □■ 現行基準に取り残された「既存不適格建築物」
 ■□ 新たな悲劇を防ぐ為、我々が行うべきこと

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木耐協事務局です。

大阪府北部地震での被害が徐々に明らかになってきました。
総務省消防庁の発表によると、昨日18時の段階で死者5名、
住宅被害も全壊3棟、半壊14棟、一部破損8,072棟となっています。

心よりお見舞い申し上げますとともに一日も早い再建をお祈り致します。

さて、本日は特に報道が多いブロック塀の問題点と
「既存不適格建築物」についてお伝えします。

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繰り返されるブロック塀の悲劇
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大地震によるブロック塀の倒壊が問題となったのは
1968年(昭和43年)の十勝沖地震と、1978年(昭和53年)に
発生した宮城県沖地震でした。

宮城県地震では死者28人中18人がブロック塀などの
下敷きになり犠牲となりました。

この被害を受けて、1981年(昭和56年)にブロック塀に関する
建築基準法が大きく改正されました。具体的には、塀の高さが
最大2.2メートルに制限され、鉄筋の太さや間隔、控え壁の
設置といった基準が厳格化されました。

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「既存不適格建築物」が招いた悲劇
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しかし、こうして建築基準法が改正されても、旧基準のまま
残った建築物の事を「既存不適格建築物」と呼びます。

この既存不適格建築物は補強工事や撤去を行う義務はなく、
建築当時の旧基準に適合していれば、改修義務もありません。
そのまま放置していても違法にはならないのが現状です。

通学中の9歳女児が亡くなった痛ましい悲劇の、おおもとの
原因は自然災害ですが、人災という側面が指摘されています。

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ブロック塀だけでなく住宅の耐震性も抱える「既存不適格」問題
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今回クローズアップされたブロック塀ですが、住宅の耐震性も
同様の問題を抱えています。住宅の耐震基準もブロック塀と同じく
1981年(昭和56年)に大きく改正されました。
さらに、阪神・淡路大震災の被害を受けて2000年(平成12年)にも
建築基準法が改正されています。

一昨年発生した平成28年熊本地震では、2000年以降に建てられた
現行基準の住宅と比べて、2000年以前の「既存不適格」住宅では
倒壊や大破といった被害が多く見受けられました。

木耐協はこのような悲劇を防ぐために活動しています。
ぜひ皆様も2000年以前の木造住宅に関しては、リフォームや仲介のタイミングで
耐震診断・耐震改修を勧めていただければ幸甚です。


総務省消防庁
大阪府北部を震源とする地震による被害及び
消防機関等の対応状況(第20報 H30.6.25更新)
http://www.fdma.go.jp/bn/2018/detail/1050.html

中日新聞
危険な塀 なぜ放置 旧基準時適合なら 改修義務なし
http://www.chunichi.co.jp/hokuriku/article/news/CK2018062402100017.html

弁護士ドットコム
女児死亡のブロック塀、高槻市「建築基準法に適合せず」
https://www.bengo4.com/internet/n_8060/

木耐協
『81-00木造住宅』の耐震性に関する木耐協 調査データ
http://www.mokutaikyo.com/dcms_media/other/tyousa_1801.pdf

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関連団体サイト

国土交通省 一般社団法人住宅リフォーム推進協議会 リフォーム生活向上プロジェクト 安心リフォームの証