自分の家が、どの程度地震に耐えられるかを考えたことがありますか
地震は恐い、と誰でも言います。阪神淡路大震災や宮城県沖地震、新潟中越地震・能登半島沖地震などの被災状況をテレビや新聞の報道で繰り返し見せられると、「自分の町だけはこんな大地震に襲われたくない」と思われるでしょう。しかし日本中のどこを探しても、絶対に地震が起きない場所など存在しないと専門家たちは言っています。だとすれば、やはり震度7クラスの激震に襲われても倒壊を免れるよう、家を強くしておくのが一番の地震対策ということになるのではないでしょうか。
まず耐震診断から始めよう
過去の大震災の経験から言えば、人口密集地が震度7クラスの大地震に襲われたとしても倒壊または全壊する家屋は全体の約3割です。
阪神淡路大震災の時に大きな打撃を受けた神戸市東灘区周辺でも、約7割の家が(無傷とはいえないまでも)倒壊を免れています。
これまでいろいろな場面で指摘されてきたように、阪神淡路大震災で亡くなられた方は、およそ8割の方が倒壊した自分の家に押し潰されて命を失いました。倒壊の恐れがある3割の家を救うことができれば、死亡者の数は大幅に減少するでしょう。
倒壊した家と助かった家の違いは、ただその家が地震に強かったかどうかという一点に尽きます。家が地震に強い(弱い)とは、どういうことでしょうか。この点についても、今ではその理由がほぼ解明されています。老朽化やシロアリ食害なども原因として指摘されていますが、それ以前に現在の建築基準法に改正される前の家については、現在の基準に比べて壁量の基準が厳しくなかったこともあり、総じて強い家屋とはいえません。
従って昭和56年の建築基準法大改正の前に建てられた家や、それ以後の建築であっても増改築を行った家、風水害で被災した経歴がある家などについては、まず耐震診断をおこなって現状を把握しておくのが良いでしょう。
耐震診断で何がわかるのか
現在木耐協や自治体が実施している耐震診断は、国土交通省が監修した「木造住宅の耐震診断と補強方法」に基づいて行われていますが、この診断でわかるのはその家の「現行建築基準法への適合度」です。
強い地震による上下左右への揺さぶり、あるいは斜め方向へのねじれが働いたとき、どこまで耐えられるかを判定し、数値化して結果を4段階で示します。
この診断方法において重視される内容は、「壁の状況」「柱や梁の接合部分」「家全体の形状」「建物の老朽度」など、多岐にわたります。一般的に壁の量が多いほど、外部からの力に耐えるようになることはもちろんですが、いくら強い壁を持っていても接合部分が弱いと、地震時に接合部から破壊されてしまうことがあります。また細長い家やL字型の家などは、特定の方向からの負荷に極端に弱いことが明らかになっています。建物自体の老朽化も耐震性に影響を与えます。これらの要素のほかにも多くの要素を加味し、耐震性が判断されます。
一般的な住宅であれば現地調査に2〜3時間、その後の診断書作成までの約1週間かかるのが普通ですが、ここで重要なのが現地調査担当者の能力です。優れた耐震診断ソフトでも入力するデータが不完全であったり重大な欠陥を見落としていたりすれば、的確な判定結果を導き出すことができません。
このため木耐協では組合員の耐震診断従事者を対象に耐震技術認定者講習会を実施し、講習後の考査合格者でなければ診断業務が行えないようにしています。現在では全国で約4000人の耐震技術認定者が活動中です。
有効、適切な耐震補強とは
最初に説明したように、現行の建築基準法に準拠して建てられた家であれば、たいていの地震で倒壊したり大破壊される可能性は非常に低いと考えられます。そこで既存住宅の耐震補強では、できるだけ現行基準法の規定に近づけることを目的としています。
木耐協ではこれまでに全国で3万件以上の耐震補強工事を行ってきていますが、補強を必要とする家の大部分に共通していたのが、「壁量の不足」と「壁配置バランスの悪さ」でした。
在来工法の住宅では南向きの部屋に大きな開口部を設けるケースが多いのですが、採光を優先するあまり壁をできるだけ減らそうとする傾向があります。壁量の不足を補うには壁を新設するのが早道ですが、間取りによっては壁を作るとほとんど日光が入らなくなったり、使い勝手が悪くなる場合もあります。そういった時には既存の壁や戸袋部分を利用して、強い壁に作り替える方法が取られます。壁の強さを強くすれば、強くしただけの耐震性の向上が期待できるからです。
耐震診断をしっかり行えば、家の強さの程度だけでなく、どの部分に弱点があるかも的確にわかります。従ってその弱点をまず解消してやれば、耐震補強の目的はほぼ達成できることになります。
ただし既存住宅の状況は千差万別で、すべてに共通する絶対的な補強方法があるわけではありません。それぞれの状況に応じた最適の方法が何か、診断の担当者とよく相談していただくのがよいと思われます。
無責任な業者にご注意
ここで注意しておきたいのは、耐震補強に名を借りた業者の被害が全国で多発していることです。飛び込みセールスや電話勧誘での問題が多いようですが、いきなり訪ねてきて「この家は危険だ。放っておくと大変なことになる」と脅かし、その場で改修工事や補強金物を売りつけるといった手口です。
前述したように、耐震診断を適切に行うためには経験豊富な技術者が2〜3時間かけて綿密に現地調査を行ったのち、その情報を(耐震診断ソフト等を利用して)解析する必要があります。それを一目みただけで「この家は間違いなく潰れる」などと断言するような業者は、まず信用できないと考えて下さい。「なぜこの家が危ないのか」という理由も示さないままに、適切な補強などできるはずがありません。
このような業者は最初から相手にしないのが一番ですが、同時に何でも相談できる業者を作っておくことをおすすめします。屋根が傷んでいるとか、床下が腐り始めているなど、あの手この手で近づいてくる業者でも「うちには専属の工務店が付いている」と言えば、ほとんどの業者は引き下がるはずです。できれば地元の信頼できる工務店や建築士事務所と親しい付き合いをしておきたいものです。