「これはレアケースですね」。耐震診断を始めた日本木造住宅耐震補強事業者協同組合員の建築士、小平弘さん(66)は驚きの声を上げた。西東京市中町、主婦、清水恵満子さん(60)宅。2階の南側が全面にわたってガラス窓となっており、壁が一枚もないからだ。
清水さん宅は71年に建てられ、81年に一部増築。清水さんはその後の84年に買い取って住んでおり、「前に住んでいた人が画家をしていて、採光などのためこういう構造にしたようです」と言う。小平さんは「耐震性を判断するポイントの一つは、壁がバランスよく配置されていること。これだと東西の揺れには非常に弱い」と指摘した。
診断の基本的な流れは、屋根裏や床下に入って基礎や床の老朽度、土台と柱、梁(はり)と筋交いの接合部などを確認、住宅の外周りも見て基礎のひび割れや屋根の種類などをチェックすることだ。建物の形状、壁の量や配置などから、地震に対する抵抗力の大きさを計算し、建築年数などを加味して総合的に耐震強度を判定する。
建築士の島崎陣八さん(60)が、デジタルカメラを手に2階西側の屋根裏に入って調査を進めた。一方、東側の長男(34)の部屋を見ていた小平さんが、問題点を発見した。「傾斜を測ると、この部屋の床はわずか1メートルの間で6ミリも傾きがある」というのだ。部屋には大きな本棚やベッド、パソコンなどが所狭しと置かれており、こうした家具の重みに加えて、建物の老朽化なども原因として考えられるという。
この後、小平さんは基礎のコンクリートの強度を調べるため、いったん外に出た。玄関わきの基礎に、縦に大きく入ったひび割れを確認し、「これは樹脂を注入して直さないと危ない」と指摘する。
基礎の強度を測るには、特殊なハンマーを使う。たたいた際に返ってきた衝撃で強度を測定。この方法は建物を壊さずに実施できるのが特徴だ。また、センサーを使って基礎の中の鉄筋の有無も確認した。降りしきる雨の中での作業だった。