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>>記事のPDF(新建ハウジングプラス1 9月号)
阪神淡路大震災や新潟中越地震を経て、住み手の耐震化への意識は高まったようにも感じる。が、実際には耐震性能が不十分とされる住宅は想像以上に多い。「既存不適格」住宅をいかに耐震診断→耐震改修・補強工事まで誘導するかが大きな課題となっている。このため昨年から今年にかけて、耐震改修に関する法制度も打ち出され、住宅の耐震化への機運は高まってきた。ここでは、こうした現状とともに、現在登場している耐震診断手法、耐震改修工事の技術、工務店の提案手法についてまとめた。
進まない耐震改修
現在、新耐震基準を満たさない、耐震性が不十分な住宅は約1150万戸あると推計されている。
木造住宅の耐震診断・改修を手がける全国ネットワーク、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)が今年4〜6月に実施した1146棟の耐震診断結果でも次のようなデータが得られた。
この調査によると、耐震性に不安のある住宅(総合評点1.0未満)は実に83.5%。新耐震基準(昭和56年5月)以前の住宅に限定すると、約96%が1.0を下回った。また、2階の評点が1.0以下の住宅は63.7%。これまで1階部分を補強すればよいという認識が強かったが、2階の耐震性能不足による危険性も明らかになった。
国の対策と目標
こうした現状を受け、国も住宅の耐震改修に本腰を入れ始めた。政府の中央防災会議は昨年3月、東海地震や首都圏直下地震などの大地震による死者数を今後10年間で半減させるとの目標を掲げた。平成17年10月には「改正耐震改修促進法」が成立、今年1月に施行された。基本方針は次の5点。(1)わかりやすい情報提供(2)地域での相談・チェック方法の確立(3)地方自治体・市区町村が対策に乗り出す(4)過剰な商業主義の排除(5)基礎的な性能部分について公的認定制度を活用。
耐震診断・改修の補助事業にかかる予算も、昨年度は20億円(補正予算30億円追加)だったが、今年度は130億円に大幅拡充。
また、今年6月に施行された「住生活基本法」でも、ストック住宅の新耐震適合率を平成27年までに90%(平成15年:75%)まで向上すると掲げられた。
さらに、建築確認制度の見直しを進める国交省では、2階建て以下の木造住宅の建築確認の際、これまで省略していた耐震強度の審査を義務化する方針を固めている。
耐震診断・改修の方法
現在耐震診断の多くは、(財)日本建築防災協会発行の「2004年改訂版 木造住宅の耐震診断と補強方法」(国交省住宅局建築指導課監修)に準拠して行われている。この改訂版では、適用範囲の拡大、耐震診断法の充実、評価対象の耐力要素の拡大、診断対象の地震動の明確化、補強方法の充実などが図られた。これまで「壁の料」「壁のバランス」が評価の中心だったが、「接合部・床の仕様」などの項目が増えたことで、旧診断法より評点は低くなる傾向に。つまり、旧診断法で安全だった住宅でも新手法で再診断すると評点1.0を下回る可能性がある。
耐震診断には、手計算が不要なうえ診断作業の手間・コストを省略できる市販ソフトを活用したい。木造住宅用としては、「木耐博士S」(エイム)、「ホームズ君耐震診断Pro」(インテグラル)などが販売されており、価格も手頃。診断だけでなく、耐震補強プランの自動生成、調査時の写真・コメントの挿入、見積出力など、住み手に診断結果と改修計画をわかりやすく説明できる機能を備えたソフトが登場している。
最近では、図面や目視だけでは確認し切れない耐震性、壁内の状況を確認する手法にも注目が集まっている。たとえば、ビイックの「動的耐震診断」は、建物の2階に振動機を設置し震度1程度の揺れを人工的におこして、住宅内のどの部分が地震に弱いかなどを計測する。インテグラルが今秋にも発売する「筋交いセンサー」は、壁を壊すことなく筋交い・柱の位置を用意に画像化して確認できる装置。従来のX戦・赤外線探査に比べ、手軽・精確・低コストなのが特徴だ。
一方、耐震改修技術も年々向上しており、施工・コストとも手頃になりつつある。各種外付け耐震金物に加え、屋内側から内壁を補強できるキット「NEWかべつよし」(エイム)、柱・梁・筋交いの接合部をポリエステル製ベルト+接着剤で補強する「木造SRF工法」(構造品質保証研究所)など、多様化が進んでいる。
課題と住み手の不安
先に紹介した木耐協調査で明らかになったのが、「耐震診断結果と改修工事実施率に相関関係がみられない」という事実だ。通常、総合評点が1.0を下回れば改修に踏み切ると考えがちだが、住み手はそう簡単に決断しない。最大のネックはやはりコスト(木耐協調査の平均工事費:約127万円)。「安全のために資金を投じる」意識はまだ低いようだ。特に高齢者の場合、いつ起こるかわからない大地震に備えて耐震改修にお金をかけるよりも、日々の生活に回したいとの考えが強い。
また、昨年明るみになったリフォーム業者詐欺事件をきっかけに、住み手の警戒心は高まっている。安易な「無料耐震診断いたします」といったセールストークは逆効果になる可能性もある。
工務店のとるべき対策
つくり手とすれば当然、倒壊しないレベル(総合評点1.5以上)まで耐震性を高める補強工事を提案したいところ。だが、耐震改修のみに莫大な費用を投じる住み手がほぼいない現状を考えると、妥協案を提示して「少しずつでも耐震性を向上していきましょう」という柔軟な姿勢が求められてくる。入口はキッチン、バスの水まわりリフォーム、クロスや外壁の取り替えといった小規模改修でも、「ついでに耐震診断もしておきましょうか?」「耐震性の向上につながるので軽量屋根材に替えてはいかがでしょうか?」など、さりげない提案も有効だろう。
また、手間・コスト負担は増えるが、全棟で構造計算を実施して理論的な裏付けを示すことで、耐震改修を促す方法もあるだろう。こうした個別の補強提案・耐震化異種は、小回りのきく地場工務店こそ強みを発揮できる分野だ。
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