耐震強度偽装事件をきっかけに、賠償責任保険に加入する設計事務所が増加している。民間市場で設計者の業務責任を明確化する目的から、委託先を保険加入の設計事務所に限定する動きが出始めたことが背景にある。6月20日に施行される改正建築士法で賠償保険の関連書類が閲覧対象になることも、設計事務所の加入意識を高めている。2006年度末の加入数は、創設以来初めて1万社を突破した。
設計・監理業務を対象とした賠償保険は、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会(JIA)、日本建築士会連合会がそれぞれ運用している。3団体はともに「これまでも加入数は伸びていたが、偽装事件以降から新規契約が顕著に増えている」と分析する。
06年度末の加入数は前年度に比べ、士会連合会が約500社、日事連が約300社の増加となり、JIAはことし4月分だけで40社程度が新規加入となった。5年前の02年度末に8345社だった3団体合計の加入数は、06年度末で1万社を超えた。
偽装事件を契機に、設計者の業務責任に対する建築主側の意識が高まり、保険加入で担保させるケースが増えている。こうした動きが元請けの設計事務所とパートナー関係にある構造設計事務所の加入増にもつながっている状況だ。
改正士法では、設計業務で生じた損害を賠償するための保険契約などの書類閲覧規定が盛り込まれた。会員の22%(3331社)が加入している日事連では、法改正を見据え、会員に保険加入を積極的に呼びかける。07年度中に30%まで引き上げる目標を持っている。
民間市場で設計者責任が強く求められる中、保険加入の有無を競争参加資格申請で記入させる自治体も増えつつある。既に熊本、宮崎、茨城、鳥取、岩手の5県に加え、神戸市、西広島市などでも取り組む。日事連の保険代理店を務める日事連サービスは「最近、自治体から保険加入実態についての問い合わせも増えている」という。
設計事務所の保険加入が伸びる一方で、設計ミスによる事故(保険支払い)件数も増加傾向にある。地盤を含めた構造関係の事故に加え、これまで施工者側が一括して対応していたクレーム処理を設計者にも肩代わりさせるケースも増えた。事故の増加で保険料を増やす動きも出ている。