【前回分はこちら:第13回 新診断法の解説(3)】
前回は主に「必要な耐力Qr」の具体について話を進めましたが、今月は「その建物が保有している(と思われる)(水平方向の)耐力Pd」の算出方法について、詳しく見ていきます。
「保有耐力Pd(KN)」の算定では 直接的には
(1)基礎の状況
(2)「方法1」(耐力)壁両端柱の柱頭・柱脚の接合状態
(3)「方法2」(耐力)壁や垂壁付き独立柱自体の強さ(KN)
(4)耐力要素の配置(四分割法や偏心率)と床仕様との組合わせによる低減
(5)老朽度による低減値
の要因から求めます。以下これらについてキーポイントを述べます。
キーポイント8
(1)基礎の状況については、地盤要素は含まれず基礎そのものの状況で判断します。即ち「基礎I」では健全な鉄筋コンクリート造の布又はベタ基礎とします。ここには「杭使用の鉄筋コンクリート造」も当然入ると思われますが、多分時代的にその様な基礎の実例が皆無に近いということで省かれているのだと思います。しかし古い建物でも絶対に無いとは言いきれないため、もし該当する場合には「基礎T」として処理して良いと思います。
次に「基礎II」に該当する基礎とは
a.ひび割れのある鉄筋コンクリートの布基礎、
b.無筋コンクリートの布基礎、
c.玉石基礎だが柱脚に足固めがあるもの
です。従ってたとえ鉄筋コンクリートの布基礎でもクラックが入っていては「基礎I」にはランク付けできず、「基礎II」に格下げとなります。(ここでいうクラックは幅0.3mm以上としましょう。しつこいですが「品確法に基づく告示1653号、住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」による'基礎のクラック'で0.3mm以上のひび割れに対し、「瑕疵責任の可能性が一定程度存する」という記述がその根拠です。)
最後に「基礎III」として上記「基礎I・II」に該当しない「その他の基礎」があり、コンクリートブロックやプレキャストコンクリート、そして足固めのない玉石基礎等がこれに該当します。以上、建物を支える基礎の状態をこれら3つのランクに分けます。
キーポイント9
次に(2)として「(メクラ壁の)耐力壁の両側柱の柱頭・柱脚の接合状態」はどうでしょうか。
つまり両端の柱が土台や横臥材とどの様な接合になっているかを見て、以下の4つにランク付けします。
「接合部I〜IV」ですが「接合部I」には
a.告示1460号に適合する接合仕様
b.N値計算法により設置された接合仕様、及び
c.構造計算に基づき設置された接合仕様
が含まれると考えて良いでしょう。
次に上記「接合部I」ではないものの
d.羽子板ボルト、
e.山形プレート(VP金物)、
f.かど金物(CP−T、CP−L)や
g.込み栓を用いた接合仕様を
以上を「接合部II」とし、 また
h. ほぞ差し
i. 釘打ち
j. かすがい等の接合仕様
以上については「接合部III又はIV」とします。「IIIとIV」の違いは、「ひとつの構面の両端の柱が通し柱」なら「III」とし、そうでなければ「IV」とします。
従って2階建てで両端の角柱が通し柱であるか、3階建てで各階両端の角柱が3階分の通し柱であれば「接合部III」であり、或いは3階建てで各階両端の角柱が1〜2階だけが通し柱であれば2階部分の壁に対して、又は2〜3階だけの通し柱であれば3階部分の壁に対してだけ「接合部III」となり、その他の階では「接合部IV」として評価します。1〜2階通しと2〜3階通しの場合のそれぞれ1階、2階柱脚部は上階からの引抜の影響を受けるので1ランク下げた「接合部IV」と評価するのが妥当のようです。(参考:テキスト298〜304ページ)
キーポイント10
「方法1」では上記2種類の仕様ランクの組合わせと、設置されている「(耐力)壁の強さと設置階」別に、その壁の「耐力低減」をおこなって、個々の壁の(実質的な)評価耐力とします。(テキスト27ページ)。また2階建ての2階及び3階建ての2、3階の場合の「基礎仕様ランクは全てI」として表を参照します。「(耐力)壁の強さ別低減」では、「接合部I」と「基礎I」の組合わせ以外では壁の強さ倍率が大きくなる程低減の割合が大きくなります。
つまりそれ以下の組合わせではいくら強い壁を設置したところで、基礎自体や壁周辺が先に破壊してしまうので、「壁本来の強さ」を発揮できません、という訳です。基礎と壁周辺がしっかりしていて壁を支持し、その壁が先に壊れるという、いわゆる「壁先行破壊」の実現が肝要な訳でこれが低減の割合として規定されたと理解してください。
(つづく)