【前回分はこちら:第12回 新診断法の解説(2)】
キーポイント4
建物上部構造の「必要な耐力Qr」の具体は、
(1)階構成(平屋〜3階建て)と対象階、仕上仕様(「軽い」「重い」「非常に重い」)と各階の床面積により決定される「必要耐力」
(2)建物の建設されている地域(地震の地域係数Z…1.0〜0.8、但し沖縄は0.7)による係数
(3)著しく軟弱と思われる地盤の場合は1.5倍の割増し係数
(注)告示1897号の判断基準に基づき特定行政庁が指定する、「地盤が軟弱な区域」以外の地盤でも、
実質的に軟弱な地盤と判断できる場合には(診断者の責任において)この割増し係数を使うこと。
|
(4)建物の最上階を除く短辺長さが4m未満の場合は屋根面積の影響を考慮し1.13倍を割り増し
(形状割増係数)
(5)多雪区域の場合、積雪深に応じて割増す
積雪1mのとき0.26Z、積雪2mのとき0.52Zを、積雪1〜2mの場合は直線補間の耐力分を加算する。また「雪降ろしの慣習」のある場合には積雪1mまで減らすことが出来る。
|
(6)1階がS造やRC造で2階以上が木造の混構造の場合は木造部分を1.2倍の割増し
…という、(2)〜(6)の5つの係数を足したり掛けたりして、「必要耐力Qr」を求めます。 ここでこれらの係数を実際にはどうするかと言えば、各階のQrは、
各階の床面積 × (単位面積当たりの必要耐力 + (5)の多雪区域の場合加算耐力 )
× (2)の地震の地域係数Zによる係数 × (3)の軟弱地盤割増係数
× (4)の形状割増係数 × (6)の混構造割増係数
|
という関係になります。 注意を要するのは「多雪区域の場合の加算耐力分」を基本となる単位面積当たりの必要耐力に先に加算しておき、これに(2)・(3)・(4)・(6)の各係数を掛けることです。(3)・(4)・(6)は全て割増しです。勿論全ての係数がからむとは限りませんので、該当項目がある場合には見落とさずに算定してください。
キーポイント5
さて上で算定した「単位面積当たりの必要耐力」がすべての基になる訳ですが、これには2通りの算出方法がある。テキスト(「木造住宅の耐震診断と補強方法」【青本】、以下のページ数は全て同様)25ページの表3.3と37ページの表3.10がそれである。表3.3は各階が同一面積つまり、総2階、総3階の建物を想定し、表3.10は精算法であり一般性が高い。表3.3がむしろ特殊なケースと考えた方が良く、いつでも精算法で対応できるように訓練しておいてください。
キーポイント6
この精算による各階のQrには、k1〜k6 の係数が介在してきますが、37〜38ページの解説の通り、上下階の床面積の比(Rf1、Rf2)により決定される値で、2階建てならk1とk2だけが関係し、3階建てならk3〜k6が関係することになる。(37ページの表3.10、184ページの計算表(b)の(2)参照)
キーポイント7
ここまで特別な説明無しで話を進めてきましたが、新診断法では「必要耐力Qr」と「保有する耐力Pd」との比較と言いました。(前回分のキーポイント3)従来の診断では「必要壁量Lr」と「存在壁量LT」の関係でした。
新診断法への移行に伴い、「壁量」比較から「(耐力壁等の)耐力」比較になった理由は何か? を理解しておく必要がありましょう。前々回の(4)に(中小地震ではなく)大地震時における建物の倒壊・崩壊の安全性の評価という明確な立場を取ることと関係があります。
これまでの「壁量」思想に基づく「壁倍率」は、30ページ解説のようにその大元になるのがP0であり、このP0は4つの検討式で得られる最小値から決定づけられるのですが、大地震時における建物の倒壊・崩壊という限定的な評価法には、このうち2つ目の検討式(0.2√(2μ-1)・Pu)…「終局耐力Puとネバリの関係μ」が耐力要素等の持つ耐力そのものを評価するのに整合性がいい。ということから変更されたと理解して下さい。従って4つの検討式からの下限値を採用していた耐力要素の評価は2つ目の式だけで決定する為、同じ耐力要素でも従来の評価とは必ずしも一致しないことになります。(28ページの表3.5の「壁強さ倍率」を1.96で割ったのが従来の「壁倍率」の近似値ですが、微妙に異なるのもあります。)
(つづく)