やはり壁の量と配置に問題が…
今回の診断を担当したのは、仙台市に本社をおくミサワホームイング東北(株)の一級建築士です。同社は大手ハウスメーカーの系列会社ですが、最近は既存住宅の耐震補強にも力を入れています。
まず現地調査を行った診断者は、「まだ大地震の後遺症がそのまま残っている」と感じたといいます。診断者によれば、依頼者様邸は建物の形状そのものは悪くないのですが、南面開放型の構造で壁の総量が決定的に不足しているとのことでした。
また壁配置も偏っているため、特に東南方向に応力が集中しやすい構造となっています。そういえば、基礎が損壊した場所も東南隅でした。また柱や梁の接合部付近には、明らかに残留変形が残っているそうでした。
ただし昭和56年の改正基準法以後の建物ですから、基礎周りは比較的しっかり作られていたようでした。このため床面の水平にはほとんど影響が出ていなかったといいます。
耐震診断の結果、依頼者様邸の判定は「やや危険」というものでした。やはり壁量の不足と配置の悪さが最大の原因で、地盤がやや軟弱な地帯であることも判定を下げた理由です。この判定は、辛うじて「危険」という判定を上回ってはいますが、「一応安全」とされる判定からはやや遠いものでした。
家の特徴を損なわない耐震補強
この診断結果を見て、依頼者様も補強の必要性は感じていたのですが、もろもろの事情から実際に耐震補強を行ったのは診断から1年後の昨年12月でした。判定を下げた原因はハッキリしているため、その弱点を補ってあげれば判定数値は大幅に改善されます。つまり壁量の不足が解消できればいいというわけです。
しかしこの家は南側に三つの和室が並んでおり、前面には欄間つきのサッシを使っています。採光の良さがこの家の最大の魅力なのです。また仕切りのふすまを取り払えば、たちまち20畳の大広間になります。そのため中間に壁を新設してしまうと、この家の一番の特徴が失われてしまうことになるのです。
そこで診断者が提案したのは、南面の東隅と西隅の既存壁の強度を高める方法です。両端の壁の強度を上げることによって、壁量の不足を補うわけです。当然ながら損壊していた南西隅の基礎は補修され、さらに壁補強をしていない北面の両隅には、直下型地震に備えて外付け型のホールダウン金物が取り付けられました。
これら一連の補強工事によって、T邸の診断数値は「ほぼ安全」という状態まで改善されました。
お施主様から「ひとこと」
あの大地震のあと、この家はほとんど補修をしていません。いずれ専門家に見てもらって、しかるべき補強をしなくてはと考えていたからです。
まだ補強して半月ほどですから、あまり実感はないのですが、補強してあるという安心感があります。つい先日も震度33くらいの余震がありましたけれども、さほど不安には思いませんでした。