採光にこだわった家だったから
診断依頼者が危惧していた通り、ご自宅の耐震評点はかなり低く出てしまいました。
壁の配置を見ると、この家は南面、東面に壁が極端に少なくなっていました。東南隅にはほとんど壁が作られていないなど、配置のバランスもよくありません。Sさんによれば、採光の良さを優先したので、こういう形状になったということでした。
また旧基準法時代の建物ですから、筋交いが入っている壁の強度もさほど高くはなかったうえに、部分的に構造材の老朽化も進んでいました。これらの状況から、低い判定数値となってしまったものです。
どうせ改修するなら、徹底的に
いずれにせよ改修してこの家に住み続けると決めた以上、徹底的に補強しなければ意味がないというのが診断依頼者の考えでした。そこで担当組合員が提案したのが「現行建築基準法で新築するのと同じレベルでの補強」を行うことでした。
具体的には、現在の無筋布基礎を鉄筋入りの基礎に全面的に作り変え、既存壁の大部分を耐震ボードなどで補強します。それでもなお不足している壁量を補うため、南面に1か所、東面には2か所の壁を新設するというものでした。
この補強プランには診断依頼者もおおむね同意されたものの、ただ1か所、東面南寄りの隅に壁を作ることだけは、納得できませんでした。この部分に壁を作ると光の入り具合がかなり悪くなるから、一番いい部屋の値打ちが半減してしまいます。しかしどう強度計算をしてみても、ここには強い壁が必要です。
木材の格子組で耐力壁の機能を
そこで担当組合員が考えたのは、壁と同等以上の耐力がある化粧格子を作ることでした。45×90のスギ材を使用して格子を組み立て、これに壁の役割を果たさせようというわけです。
これに明かり取りの障子を組み合わせれば採光は十分ですし、和室の雰囲気を壊すこともありません。機能的にもデザイン的にも秀逸のアイディアです。
また、十数か所に及ぶ既存壁を耐震ボード入りの耐力壁とし、壁補強部分はすべて内付け型のホールダウン金物で新設した基礎に緊結されています。さらに窓など開口部の垂れ壁も、耐震ボードで補強されました。
さらに、同時に行われた2階部分の一部改装にあわせて、2階の床には厚さ12oの合板を張りつめました。これは水平方向の強度を高める効果があります。
これら一連の補強工事によって、診断依頼者宅の診断数値は大幅に改善されています。担当組合員の言葉通り、現行基準法で新築された家とほぼ同等の耐震強度を確保したことになるわけです。少し古い家でも、その気になりさえすれば安全な家に作り変えることができるという好例となりました。